ドナルド・トランプ米国大統領が、人工知能(AI)に関する新しいタスクフォースを新設し、その責任者に国家情報局長のジェイ・クレイトンさんを指名しました。
このタスクフォースは、トランプ大統領が「AIタスクフォース」と呼ぶ組織で、米国がAIにおいて世界のリーダーであり続けることを目的としています。
AIタスクフォースの役割と構成
このタスクフォースは、AI企業やインフラ提供者のほか、消費者、公共団体、さらには宗教団体との政府間の連携を調整する役割を担います。トランプ大統領は、この組織が米国人の利益を保護し、生活を向上させると述べています。
運営面では、トランプ大統領およびホワイトハウス首席補佐官のスージー・ワイルズさんへ直接報告を行う体制となります。また、指名されたクレイトンさんは、120日以内にAIのリスクと機会について調査・報告し、連邦政府が果たすべき責任について提言を行うことになります。
タスクフォースには、クレイトンさんのほか、以下のメンバーが名を連ねています。
- アンドリュー・ファーガソンさん(連邦取引委員会(FTC)委員長)
- エミル・マイケルさん(国防省研究・エンジニアリング担当次官)
- スコット・クパーさん(人事管理局長)
また、副大統領のJD・ヴァンスさんやピート・ヘグセス国防長官、さらに外部アドバイザーとしてベンチャーキャピタリストのデビッド・サックスさんやコンドリーザ・ライス元国務長官なども参加しています。
責任者に指名されたジェイ・クレイトンさんとは
責任者に指名されたジェイ・クレイトンさんは、現在国家情報局長を務めており、トランプ大統領にとって信頼の厚い人物であると報じられています。
クレイトンさんはもともと弁護士であり、2017年にはトランプ大統領によって証券取引委員会(SEC)の委員長に指名された経歴を持ちます。また、第2期政権の開始時には、ニューヨーク南区連邦検事局の責任者も務めました。
学歴としては、ペンシルベニア大学で工学および法学の学位を、ケンブリッジ大学で経済学の学位を取得しています。テクノロジーに関する深い専門背景を持つわけではありませんが、連邦政府の官僚機構をうまく動かせる豊富な経験を持っている点が評価されているとみられます。
クレイトンさんは、AIという技術について「game changer」(ゲームチェンジャー)であると述べており、「When something’s both an opportunity and a threat, you better get your arms around it」(機会であると同時に脅威でもあるものは、しっかりと把握しておくべきだ)と考えているようです。
開発加速を優先するトランプ政権の方針
今回のタスクフォース新設の背景には、中国とのAI開発競争という強い危機感があります。トランプ大統領は、米国が中国に先んじてリードしている現状を維持したいと考えており、「And, frankly, I want to keep it that way because whoever wins AI, wins.」(率直に言って、AIに勝った者がすべてを手にするため、この状態を維持したい)と述べています。
そのため、トランプ大統領はAI開発の速度を落とすような規制には否定的です。開発を抑制する法律のアイデアを拒否しており、AIへの懸念を「hoax」(作り話)と呼んだこともあります。
業界側に対しても、厳格な規制ではなく、企業による自主的な監視(セルフポリシング)を促すアプローチを採っています。トランプ大統領は、企業が自主的な安全基準に合意していることについて、「I’m seeing tremendous self-policing, and they understand that they have to self-police」(素晴らしい自主規制が行われており、彼らも自主的な監視が必要であることを理解している)と語っています。
対立する視点とAIのリスク
一方で、このような開発優先の姿勢には批判の声も上がっています。民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、単に委員会を作るだけではAIの差し迫った脅威に対処できないと指摘し、人々を保護するための実効性のある規制を可決させるべきだと主張しています。
また、AIの安全性に対する懸念は現実のものとなっており、最近ではOpenAI社のエージェントがオーストラリア政府のウェブサイトに侵入し、公的医療制度(Medicare)の非機密データにアクセスしたことが認められました。オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相はこの件について、法的結果が伴うだろうと述べています。
こうしたリスクがあるなかで、OpenAIのサム・アルトマンCEOは、AIのメリットは一定のリスクを受け入れる価値があるとし、技術は公衆が利用可能なままであるべきだと論じています。
まとめると、トランプ政権は「米国の覇権維持」と「開発加速」を最優先事項に掲げており、その舵取りをインテリジェンスのトップであるクレイトンさんに託したということになります。
出典 BBC CNN CNBC Spy chief Jay Clayton takes on White House’s AI portfolio – Nextgov/FCW Trump chooses top spy boss to run new AI taskforce President Donald Trump Reveals Super Intelligence Force Staff – AOL Trump’s Super Intelligence Force: Jay Clayton to Lead | EasternEye Spy chief Clayton, the Trump loyalist tech bosses trust on AI
ピックアップ記事



