AIによる音楽生成ツールを提供しているSuno(スノ)が、最新バージョン「v5.5」をリリースしました。今回のアップデートで特に注目されているのが、ユーザー自身の歌声をキャプチャしたり、アップロードしたりして、それをベースに新しい曲を生成できる「Voices」という機能です。
これまでの音楽生成AIは、テキストから楽曲を自動的に作り出すものが主流でしたが、v5.5では自分の声をAIに学習させることで、自分自身の声で歌うポップスターのような楽曲を作成することが可能になったと報じられています。
Sunoが目指す「責任あるAI」と開発理念
急速に普及する一方で、AIによる音楽生成は権利関係などで激しい議論を巻き起こしています。こうした状況の中、SunoのCEOであるMikey Shulman(マイキー・シュルマン)さんは、同社が責任ある取り組みを行っていると主張しています。
Shulmanさんは、音楽は人間表現の最も古く普遍的な形式の一つであり、常にテクノロジーと共に進化してきたと述べています。また、AIは人々が新しいものを創造するのを助けるべきであり、誰か他の人の作品を模倣させるべきではないという考えを掲げています。
具体的に、Sunoでは「独自のトレーニング戦略」と呼ぶトレーニング戦略を採用しているとのことです。例えば、既存のアーティストに似た曲ではなく、オリジナルの曲を作ることを目的としているため、トレーニングのメタデータにアーティスト名を使用しないという選択をした、と説明しています。
また、CEOは、テクノロジーは創造するための新しい道を切り開くものであるが、音楽を意味あるものにする人間ならではの体験や感情、不完全さを置き換えることはできないと考えていることを明かしています。
音楽業界との対立と法的な争い
一方で、音楽業界からは強い警戒感や反発の声が上がっています。Sunoは現在、ユニバーサル・ミュージック・グループやソニー・ミュージック・エンタテインメントを含む多くのレーベルやアーティストから訴えられています。
また、ジェイソン・イズベル(Jason Isbell)さんらを中心としたクラスアクション(集団訴訟)も起こされています。この訴訟では、ソフトウェアがアーティストの名前を利用して音楽を生成し、ミュージシャンのアイデンティティを搾取している点に焦点が当てられており、実質的なアイデンティティ盗用にあたると主張されています。
これに対しSunoは、特定の作曲物をそのままコピーすることを防ぐ制限を設けているとしています。また、YouTube MusicやDeezerなどのプラットフォームから収集した膨大なデータを使用してモデルをトレーニングしたという報道もありましたが、Suno側はこれが「フェアユース(公正な利用)」の概念に当てはまると主張しています。
ただし、すべての業界関係者が否定的だったわけではありません。ワーナー・ミュージック・グループ(WMG)はSunoとの法的紛争を解決し、同社がWMGの音楽カタログを使用してシステムをトレーニングすることを正式に許可して、共同でモデルを開発することに合意したと報じられています。
配信制限と透明性の向上へ
AI生成曲が大量にストリーミングプラットフォームに流れ込むことで、人間のアーティストへの分配金が減少するという経済的な懸念も出ています。
これを受けてSunoは、プラットフォーム上でのAI生成曲の大量配布を制限するため、ダウンロードに関する新しいポリシーを導入するとしています。これは、プロフェッショナルな利用や個人的な利用は維持しつつ、大規模な悪用を困難にするための措置であると説明されています。
さらに、他のプラットフォーム上でもAIが生成した曲であることをユーザーが検出しやすくするための「AI生成曲の検出ツール」も導入される予定です。
AI音楽生成は、単なる実験的な段階を過ぎ、創作のあり方そのものを変えようとしています。音楽業界にとっての「最大の悪夢」になるのか、あるいは「最大の希望」となるのか、その行方が注目されています。
出典 MusicTech The San Diego Union-Tribune Billboard Jason Isbell Leads New Class Action Lawsuit Against Suno AI – Saving Country Music Suno vs. The Music Giants: The AI Music Battle That Could Change Everything – Kingy AI Suno AI was trained illegally using YouTube and Deezer – Root-Nation.com Suno Review: v5.5 Turned Me Into a Pop Star With My Voice – Unite.AI Believe and TuneCore are blocking distribution of Generative AI tracks made on ‘pirate studios’ like Suno – while inking new partnerships with ElevenLabs and Udio – Music Business Worldwide
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